Clap log (09/07〜11/23)

    話によってテンションの落差が激しいので、閲覧の際はご注意ください。



    『彼女の可能性』番外編 英+モブ、米+モブでそれぞれの過去の話

    side Arthur  side Alfred  


    英VS西 大航海時代あたり  


    米誕祝い前後の鬱英 本家誕生祝より前  


    都市伝説【小さいおじさん】 英+日+米
























『彼女の可能性』番外編 英+モブ



    荒れた地に、道と呼べるものはない。

    ただ、その乾いた大地に、車輪の跡が数本残るばかりである。

    砂埃交じりの風に目を細めながら、見上げたのは、








    「それにしても、今時ヒッチハイクとはなあ」


    そう言って、運転席の壮年の男性は笑った。

    多分、自分の父親よりは若いのだろうが、焼けた肌と第一次産業に従事する者の疲労感が彼を

    実年齢よりもずっと老いさせて見せていた。


    ガタガタと車が規則性のない揺れ方をするのは、そこらじゅうに小石が転がっていたり、所々陥没

    していたりするからだろう。

    慣れない揺れに舌を噛みそうになりながら、アーサーは返事を返した。


    「昔読んだ本を真似てみたんですが、うまくいきませんね」

    「はは、そりゃそうだ。時代が違うからな」

    「でも、こうやって親切な方も中に入るので、何とかここまで来れました」

    「すげぇよなぁ。何より、よくこんなことする気になったもんだ。まだ若ぇのに度胸あるな、小僧」


    闊達に笑う男に、アーサーはわずかな羨望を覚えた。

    今まで自分の周りにはいなかったタイプだ。


    「一度やってみたかったんです。一人旅」

    「でもそれだけでイギリスから出てきたんだろ?やっぱりすげぇよ」

    「荷物もろくに持たないなんて、何考えてるんだって旅に出た時の自分を今でも呪いますよ」

    「荷物ってそれだけか?」


    男がちらりとアーサーの足元に置かれたバックパックを見る。

    アーサーの荷物は、それだけだ。


    「長旅に多すぎる荷物はじゃまだとか、そんなこと考えた気がします。野宿とかすると、ああ、あれ

    持ってくればよかった、とか、何であれ持って来なかったんだ、ってなるんですよ」

    「ほんとに後先考えずに飛び出してきたんだな、小僧」

    「今しかないと思ったんです」


    今じゃないとだめだと、何かに駆られるように家を飛び出した。

    最後の夏休みを全部費やした壮大な一人旅。


    「ま、世界を見ることはいいことだ。実は俺の息子もな、海外に旅行に行ってんだ」

    「息子さん、いらっしゃるんですね」

    「おう、ちょうどお前くらいでな。だからだろうな、あんなとこに突っ立てるお前をほっとけなかったの

    は」

    「じゃあ、俺は息子さんに感謝しないと。おかげでこんないい人に会えた」


    お世辞でも、リップサービスでもない。アーサーの口から飛び出したのは、紛うことなき本音だった。

    旅は出会いの連続で。こんな人と一人でも多く出会えたなら、この旅は有意義なものだったと言え

    るだろう。


    「あいつもここにいればお前に会えたのにな。親の贔屓目かもしれねぇが、あいつはこんな錆びつ

    いた田舎で一生じっとしてるようなやつじゃねぇんだ。あいつは世界に出るぜぇ。お前と話でもでき

    ればいい刺激になったんだろうが……」

    「俺も、会ってみたかったです」


    この人の、息子とやらに。

    きっと父親に似て、闊達で、気さくで、底抜けに明るいやつなんだろう。

    ああ、本当に。会えればよかったのに。


    「小僧、夢は何だ?」


    唐突に、男が切り出した。

    その問いに、アーサーは口ごもった。果たして、言ってもいいのだろうか。

    周囲に理解者は一人もいなくて、才能だってあるかもわからない、あの夢を。


    「俺の息子はよぉ、映画を撮りたいって言ってんだ。お前にそんな芸当無理だって、最初は言った

    んだがなぁ、なるって言って聞かねぇのよ。D.Cの大学に行きたいとか言って、勉強もまじめにや

    ってるし、ああ、本気なんだと思ってよ。それで、なら俺は親としてやれるこたぁ全部やってやりた

    いんだが、なにぶん俺には学もねぇし、金だって、そんなにあるわけじゃねぇ。そんな俺が、あいつ

    にしてやれることは何なんだろうなぁ?」

    「きっと、その気持ちだけで十分ですよ」


    気づけばアーサーは口を開いていた。

    だって、だって、


    「理解してくれる人とか、背中を押してくれる人の存在って、すごく大きいんです。俺、画家になり

    たいんですけど、もう家十大反対で。今回の旅は、その当てつけでもあるのかもしれません。あん

    たらが無理だ無理だって言ってきたことを、やり遂げてやったぞ、っていう。だから、」


    あなたの存在は、息子さんにとってもとても大きいはずだ。


    そう、力説していた。

    あなたみたいな人が、俺にも欲しかった。そんな弱音は、寸前で飲みこんで。


    「そう小僧に言われると、安心するよ。そうか……なら俺はあいつの夢を全力で応援してやらねぇ

    とな」

    「そうしてあげてください」


    きっと、それが何よりも力になるから。








    「じゃあ、ありがとうございました」

    「ほんとにここでいいのか? ちょっと寄り道になるが、俺の家にくりゃあ泊めてやれるぞ。息子の

    部屋もちょうどあいてるしな」

    「いえ、ここまで乗せてくれただけでも、ホントに」

    「そうか……小僧が来るなら家内も喜ぶかとも思ったんだが、ま、お前の都合もあるだろうしな。こ

    こでお別れだな」

    「はい、本当に、ありがとうございました。ジョーンズさん」


    荒涼とした砂色の大地。乾いた風。


    見上げたのは、果てのない青空。


    その光景を心に焼き付けて。






















『彼女の可能性』番外編 米+モブ



    その日アルフレッドは芸術関係の学棟があるブロックを訪れていた。

    (後は医学系ブロックに行けば学食全制覇なんだぞ!)

    理由は、そんなところ。


    その広大なキャンパスゆえに、各ブロックごとに食堂があるのがこの大学の特徴の一つだ。

    食堂で腹を満たした後、アルフレッドは広がる景色の目新しさにきょろきょろと構内を散策しながら歩いていた。

    学部が変われば、そこに通う生徒の性格も変わる。


    アルフレッドの通う学部などは、昼休みともなれば広場でスポーツを始めたり、グループで騒いだりとそこそこに賑や

    かなのだが、そこと比べるとここはとても静かだ。

    穏やかな陽気のせいもあるのだろう、スケッチブックを膝に乗せて、あるいは本格的にイーゼルを置いて、絵を描いて

    いる生徒が多数いる。


    次のコマには授業は入っていなかったから、ゆっくりできる。

    緩やかな歩調で構内を散策しながら、アルフレッドは絵を描く生徒たちを観察した。

    ちらりとのぞきこんだ手元は、さすが芸術専攻、思わず口笛を吹きたくなるほどにうまい生徒が多い。


    (そういえば、美術担当は決めてなかったな)

    思うのは、ずっと抱き続けた“夢”のこと。

    本田菊に、フランシス。各分野で才能を発揮する彼らにはすでに接触を取っている。

    もっとも、まだ映画のことは切り出していなかったが。


    ここで一番は誰だろう。

    いや、一番である必要はない。一緒に映画をつくりたいと思える人はだれだろう。

    そんなことを胸の内に秘めながら。


    ふらりとやってきた中庭で、アルフレッドは足をとめた。

    燦々と光が降り注ぐ中庭に、色とりどりの彩が散りばめられていた。

    大量の絵が中庭に並べられている。

    見れば、今も講師らしき男が美術棟のほうから絵を運び出していた。


    整理でもしてるんだろうか。

    そんなことを思いながら、アルフレッドは並べられた絵を眺めた。

    これだけの絵があれば、いい美術担当を見つけられるかもしれない。それは噂や風評を集めて探すよりもずっといい

    方法に思えた。


    アルフレッドに絵の良し悪しを測る目はないが、一番いいと思えた絵の作者に声をかければいいと思った。必要なの

    はそれが美術的にどれだけ評価されるかじゃなくて、その人の描く絵がどれだけ子供に夢を見せられるかだから。


    違う、ちがう、だめ、違う、おしい、これも駄目、

    一番を決めるのは難しくとも、いいと思える作品はいくつかあるだろうと思っていた。だが、どれもいまいちピンとこな

    い。それが何を意味するかは分からなかったが、素人のアルフレッドがそう思うのだから、プロの目から見たらやはり

    評価されるものではないのだろう。


    「ちょっとどいてもらえるかな」

    「あ、ああ分かったんだぞ」

    背後から声を掛けられて、とっさに返事をして身をどけたが、振り返ってみればそれは巨大な絵を抱えた講師だった。


    「よいっ、しょ、っと」

    それを中庭の絵たちの中に加えて、講師は腰を叩いた。

    「はぁ、やっぱり処分は定期的にやらんと駄目だな」

    大きく伸びをして、講師はようやくアルフレッドに目を向けた。


    「ん?見ない顔だな。他の学部か?」

    「映学だよ」

    「ほお、監督志望か何かか。ここから一番遠いブロックじゃなかったか?」

    「学食食べに来たんだぞ!」


    そうアルフレッドが言うと、講師は少しだけ驚いたような声を上げた。

    「それだけのためにわざわざ来たのか。 いや、うちの食堂はうまいからな。私のおすすめはホットサンドだ」

    「NO!! それは食べてないんだぞ! また来なくちゃ」

    「是非そうしてくれ。ところで、こんなところに立って何をしていたんだね?」

    「絵を見てたのさ。いい絵描きはいないかなって」


    アルフレッドの言葉に講師は少し複雑そうな顔をした。

    「あまり、いい絵はなかったろう?」

    「うん」

    特に偽る理由もないので、アルフレッドは素直にうなずいた。


    「これはコンクールに出展できなかった絵でね。美術準備室にため込んでいたんだが、いい加減処分しないとあふれ

    てしまうから」

    「処分?捨てちゃうのかい?」

    「同じ絵描きとして、描いた絵を捨てられる悲しみは知っているがね。絵というものはなんといっても場所をとる」

    そう言って講師は目を細めて中庭に並べられた絵を見つめた。


    「さて、作業に戻らないと日が暮れるな。眺めていたいなら、気が済むまでいるといい」

    「なんだったら手伝うんだぞ」

    「いや、他の学部の生徒に……、いや、すまないが、お願いしよう」

    「任せてくれよ!」


    そう軽い気持ちで仕事を引き受けたアルフレッドだったが、なにぶん数が多い。

    薄暗い準備室と日のあたる中庭を往復しながら、午後の授業はさぼろうと心に決めた。


    (次に運ぶのは、っと)

    準備室の奥に進むと、アルフレッドの身長ほどもあるキャンバスが裏返しで立てかけてあった。

    重そうだなぁなんて思いはしたが、これをどけないことには残りの絵も出せないのでしぶしぶキャンバスを持ち上げた。


    (眩しっ)

    室内と屋外の明暗差がありすぎるために、外に出るたびに目を細める羽目になっている。

    中庭もずいぶん絵で埋まってきた。

    かろうじてこの大きな絵がおけそうなスペースを見つけて、ドンと縦にしたままひとまず置く。

    そのまま倒れないように手をかけながらアルフレッドは絵の表側に回った。このままゆっくりと倒せばおけるはずだ。


    「え、」

    表側に回って、


    アルフレッドはその場で動きをとめた。



    目の前に、故郷の空が広がっていた。



    その驚きに思考が一瞬停止した。数秒後、回復した頭が目の前に広がるのは描かれた青だと伝える。

    幾重にも青を重ねて描かれた蒼空だった。


    「あのっ!」

    少し離れたところに絵を並べていた講師に声をかける。

    「ん?どうかしたかね。汚してしまった程度ならどうせ処分するものだから構わないよ」

    「そうじゃなくって、この絵……」

    あまりにびっくりしすぎて言葉が出てこない。

    頭に浮かぶ言葉は一つ。


    “これだ”


    絵を置いて近寄ってきた講師が絵を確かめて、ああとうなずいた。

    「確か、カークランドが描いたやつだな」

    「カーク、ランド……?」

    「あいつは静物とか風景を描かせるとなかなかなんだが……抽象画はからっきしでな。この絵も、青の重ね方はきれ

    いだが、それだけだ」


    違う、違う、それだけじゃない。


    「空、だ」

    「空か、確かに空は青いが、これはとてもじゃないが空には……」    

    「空だよ。この国の、空だ」

    講師に話しかける問うよりは一人つぶやくようなアルフレッドに講師が怪訝そうな顔をした。


    「カークランドって、ファミリーネームだろ。ファーストネームのほうは?」

    「確か、アーサーだ。アーサー・カークランド」

    「どこに行けば会えるかな?」

    「よく旧校舎で絵を描いてるようだが……」

    「旧校舎か。わかったんだぞ」

    「会いに行くつもりかね?私が言うのもなんだが、少々偏屈な生徒だぞ」


    講師はため息をついて作業に戻ろうとした。それをアルフレッドが引き止める。

    「あっ!この絵、譲ってもらってもいいかい? どうせ処分しちゃうんだろ」

    「別に私は構わないんだが……一応著作権もあるしな……」

    「部屋に飾るだけだからさ! 作者には後で俺が伝えておくし」

    「そこまで言うなら、持っていくといい」

    「やった!」


    ガッツポーズをするアルフレッドを講師が苦笑いで見ていた。そんな絵を持って帰ってどうするんだと、そんな含みを持

    たせて。

    だが、そんなことに気づくアルフレッドではなく、絵を譲ってもらえたことを単純に喜んでいる。

    今度こそ講師は作業に戻って行った。


    残ったアルフレッドはもう一度その空を眺めた。

    これだ。

    この人と、映画をつくってみたい。




    「アーサー・カークランド……か」


    確かめるように呟いて、アルフレッドはあふれる高揚感に目を閉じた。






















英VS西 大航海時代あたり



    水平線のかなたに見えた船団に、スペインはぐしゃぐしゃとその癖のある黒髪をかき回した。


    「また来よったあの眉毛ぇ!」


    今回の積荷は高価なものも多いというのに。

    スペインは外套を翻して自らの船に向き直った。


    「全員、戦闘準備!! 今度こそおっぱらったるで!」


    そう高らかに宣言した。


    その船は小型ではあるものの、それゆえに船足が異常に速い。

    こちらが積荷のせいで船足が鈍くなっているせいもあり、その船団はあっという間にスペインの乗る船へと近づいてき

    た。

    その船首に立つのは、厭というほど見慣れたあの男。

    褪せた金髪を潮風に揺らしながら、その男、イギリスは不遜な笑みを浮かべていた。


    (国が海賊率いててどうすんねんっ)


    何度要請しても、イギリスは海賊を取り締まるどころか、こうして国自ら船に乗って略奪行為を行う始末だ。


    近づいてきたと言えども、砲弾の射程距離にはまだ遠い。

    あと少し、あと少しとスペインがその距離をはかっていると、船首に立ったイギリスが不意に右手を天高く掲げて見せ

    た。


    「まさか……!」


    その口の端に浮かぶのは、なんとも敵役が似合う凄絶な笑み。

    そして、イギリスの手が空を断つように振り下ろされる。

    スペインは確かにその口が短く単語を発したのを捉えた。

    そう、


    『撃て』


    と。


    次の瞬間、爆音とともに船が大きく揺れた。


    (その距離からの射撃は卑怯やで……!)


    イギリスの大砲はスペインのものよりも射程距離が長い。一方的に攻撃される。

    気に入らない。

    そんなことを思いつつも、スペインは船員たちが叫びだす前に指示を発した。


    「落ち着きぃ!あいつらはこの船を沈められへん。すぐ上がってくるで!準備しぃ!!」


    本当は、沈められないのではなく、沈めない、なのだが。

    やつらの目的はあくまで略奪。船舶を襲うことでスペインの国力をそぐことは、建前上二の次なのだ。


    「っとに、戦い方がセコいねん!」


    正々堂々一騎打ち。


    そんな戦い方を好むスペインは、じりじりと相手の余力をそぐような戦い方が気に入らない。


    「一発殴らんと、気が済まんわ」


    手に取ったのは、狭い船上戦では一見不利な、大振りの愛斧だ。もちろん、船上戦向きのカットラスも腰に下げてはい

    る。だが、相手はあのイギリスだ。


    戦うなら、一番手に馴染んだ獲物がいい。



    そして、ついに船と船がぶつかった。

    大量の海賊たちが船へとなだれ込んでくる。


    「いい加減にせぇや!海賊が!」


    スペインが邪魔な外套を引き剥がして、甲板へと投げ捨てる。

    対するイギリスも、腰から鋭利な光を放つカットラスを引き抜いた。


    だんっ、とイギリスの足が甲板を蹴った。

    たいていの人間ならば躊躇するであろう船の間をいとも容易く飛び越え、イギリスは再びスペインと対峙する。

    スペインはギュ、と斧を握る手に力を込めて。


    「おらぁぁあああああ!!!」


    斧を振り切った。スペインの振るう斧は、とてつもなく重い。

    人外の腕力と、その重さが空を裂く刃になる。

    だが、振り下ろしたその先に、イギリスの姿はない。

    翳った太陽に、スペインははっとして頭上を見上げた。


    「遅ぇよ、ばぁか」


    さながら舞うような跳躍。一瞬ののちにはイギリスのカットラスが目前にまで迫っていた。

    それを力任せに斧で薙ぎ払い、スペインは後ろへと飛びづさった。

    追い込むようにイギリスが踏み込んでくる。浮かぶのは、悪魔の笑み。


    「そんなもんかよ!太陽の沈まない国(笑)!!」


    一瞬あとには目の前にいる。

    俊い。素直にそう思った。

    深く斬り込まれたのをぎりぎりで避ける。

    ように見せかけて、スペインは懐に飛び込んできたイギリスを蹴りあげた。 


    「はっ、黙れやこのくそ眉毛!」


    入った感覚はあるが、この程度では碌なダメージなど与えられていないだろう。

    案の定、体勢を崩すことなく着地したイギリスが再び剣を構える。


    面倒だと思う一方で、ざわざわと騒ぐ血がある。このギリギリ感が堪らない。

    防戦一方ではつまらない。こっちはこの海賊のせいで大きな被害を被っているのだ。少しは憂さ晴らしをさせてもらおう

    か。

    イギリスに刃を向けて、スペインは口の端を歪めた。


    「お望みどおり、沈まぬ太陽見せたるわ」


    太陽が一番輝くのは、落陽の瞬間だと。そうこの海賊風情に教えてやろう。


    (あ、自分で落日って認めてもうたわ。ま、ええか)




    さあ、今はただ本能の赴くままに奪い合おうか。























米誕祝い前後の鬱英 本家誕生祝より前



    思考がはっきりとしない。

    頭の奥がぼんやりとして、ものを考えられなかった。

    空っぽになった頭に浮かぶのは、あのどしゃ降りの光景で。

    それを追い出そうと無理やり物を思うと、殊更に痛む。


    瞼がひどく重い。

    けれど、それに従って目を閉じれば、きっと眠ってしまうから。

    眠ってしまったら、見るのは決まってあの悪夢。


    3日間徹夜した時の頭痛と、

    飲みすぎた次の日の二日酔い時の嘔吐感と、

    行政が悪化した時の高熱と、

    半年間休みなしで働いた時の倦怠感と、


    それらをすべてかき集めてもこの感覚にはかなわない。

    しかも、それらは休養をとるなり、薬を飲むなり、対策をとるなりすればある程度は回復するものだ。


    だが、これは治らない。

    心が齎す体調不良は、薬なんかで騙されてくれはしないのだ。


    ガンガンと揺れる脳内に、あの日の雨音が響いている。

    ああ、気持ち悪い。



    さあさあさあと。



    気づけば分厚いカーテンの向こう側でも雨が降っていた。

    湿った土の匂いが締め切った室内にも浸み込んでいるような気がした。

    勝手に脳裏で再生されるあの日のフィルムを切り裂いてしまえればどれだけいいだろう。



    「Rain, rain, go to America,

     Never show your face again.」



    やけくそになってそう呟いた。

    かすかすと、空気ばかりが咽から漏れる。 

    思った以上に擦れた声しか出なくて少し驚いた。


    こんなことを呟いたのを聞かれれば、

    「君ん家の雲が俺のところに来るわけないじゃないか」

    なんて、小馬鹿にしたような表情で正論を説かれるに違いない。


    そんなことは理解している。

    ただ、雨でパーティが台無しになってしまえばいいのになんて考えて、イギリスは目を閉じた。


    早くこの日がすぎてしまえばいい。



       雨なんて、アメリカに行っちまえ

       絶対、二度と、戻ってくんな























都市伝説【小さいおじさん】



    小さいおじさん



    @緑のジャージ姿

    A髪は薄い

    B身長は30センチほど

    C祭り好き

    D目が合うと消える

    E幸福を呼ぶ




    日「とまあ、最近こんな都市伝説が私の家で流行っていまして」


    英「へぇ、日本のところにも面白いやつがいるんだな」


    日「私は見たことがありませんが、若い方を中心に目撃談が多発しているんです」


    英「小さいおじさんか……うちのレプラコーンみたいだな」


    日「ああ、それでしたら聞いたことがあります。確か幻の金貨をばらまくとか……」


    英「人見知りが激しいけど、いいやつだぞ。日本の家も気に入ってるみたいだし」


    日「え、っと……それはどういう意味で……」


    英「どういうって……ああ、ほら帰ってきた」


    日「帰ってきたって何がですか!? イギリスさん、そちらには誰もいらっしゃいませんよ!

      ああ、私そこの障子はきちんと閉めたはずでしたのに何で少し開いてるんですか!」


    英「どうだ? 日本の家は…………楽しい? それはいいが、あんまり日本の家の人には迷惑かけるなよ」


    日「ですから! いったいどなたとお話していらっしゃるんですかイギリスさんーーーーー!!」




    米「日本、イギリスの幻覚は今に始まったことじゃないからそんなに騒いでも無駄だと思うんだぞ☆」












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