例えばこの声が届かないとしても
雨が、降り続いている。
疲弊した国民たちを反映した体はひどく重い。重くて、いたい。
民を、国を、象徴した己の心を暴かれるのは精神的にもクるものがある。
例えば彼がいつだって水平の果てに俺の国土を見つけられたように。
例えば彼の帰路を拒むように雨が嵐がいつまでも降り続いたように。
今降る雨も、つまりはそういうこと。
それを同じ国である彼が知らないはずがない。
弱い奴だとは、思われたくないのに。
彼に裏切りを突き付けて、銃を手に取った。
初めて戦場で彼とまみえた瞬間の、彼の顔を、きっと俺は一生忘れない。忘れられない。忘れちゃ、いけない。
絶望を映した瞳に、すべてを投げ出してその手を取りたくなった自分の弱い心を必死で制した。だって、そんなことをすれば一番怒るのは君だろ? なんだかんだ言っても、君はそういう人だから。分かってるよ、最後まで足掻いて見せるから。
この声が届かないというのなら、もっと声を張り上げよう。それでも届かないというのなら、それでも届かないというから、だから、残された道は実力行使しかないだろう?
少しでも届きますようにと、交えた剣に、貴方への想いをのせましょう。
嘘だと思った信じたくなかった
雨が、降り続いている。
悪天候は兵士達の士気をそぐし、視界も遮られるせいか、戦況も思わしくない。
この雨は、お前が降らせているのか、アメリカ。
突きぬけるような青空を隠した重たい雨雲から、大粒の嵐が降りる。
国である俺達が国勢や民意に動かされるように、俺達を反映して国もわずかながらに変化する。この雨粒は、ただの気象現況か、それともあいつの涙なのか。
一体何を苦しむ。国の疲弊化、民の死か、それとも。
堂々巡りを続ける思考を払って次の作戦を練る。
物資の補給ラインの断絶、通信の妨害および傍受、指示しなくてはならないことは、山ほどあった。
戦争で大きく取り上げられるのは前線のことばかりだが、その陰に埋もれがちな細やかな工作こそが本来大切なのだ。正面でぶつかり合う前に、相手の戦力をどこまで削れるか、相手の情報をいかに手に入れられるか。情報工作もまた、前線においてどれだけ味方が有利にことを進められるかが賭かった重要な”戦争”だ。
『アレ』の対策も、考えねぇと……
白兵戦において、自軍に甚大な被害を及ぼした、ライフル銃。アメリカで実現された銃は、飛距離、精度、破壊力全てがこちらの軍のそれを数段上回っている。これではいくら物量で勝っていたとしても戦況を好転させることは難しい。
曇天の空を見上げ続けることにも疲れた。
瞼を閉じれば、銃を構えたあいつの姿が浮かぶ。
そんな姿を見た後でも、まだ夢の中にいるような感覚が抜けないのだ。ふいにあいつが銃を降ろして、冗談だよ、なんて笑う未来を、今だって夢見ているんだ。
そんなことはあり得ないと分かっているのに。あいつの覚悟がそんな生半可なものだとは思わないし、冗談にするにはこの戦争は血が流れすぎた。
それでもあの頃が帰ってくるという幻想に囚われている俺は、きっと弱くなったのだろう。
だってどうしようもなく、好きなんです
多分、俺はすごく不器用なんだと思う。フランスにも苦笑されるくらいだから、相当だ。
これくらいしか、剣を彼に突き付けることくらいしか、彼と真っすぐ向き合う方法が見つからなかった。国民の意思に従ったように見せかけて、きっとすべては俺のわがままなんだ。
いつまでも俺を弟のカテゴリから外そうとしないあの人には、これくらいしないとだめだと思った。
とうの昔から、俺が目で追っていたのは兄の背中なんかじゃなかったのに。君は何時までも後ろを歩くのは可愛い弟だと信じて疑わない。だから、無防備なその背に刃物を突き立てることに躊躇はなかった。
「好きだよ、なんて言っても信じないだろうね」
その感情と正反対のことを、俺はしたんだから。でも、このまま言葉を紡ぎ続けても、彼は家族愛としてしか俺の声を受け取ってくれないからさ。なら、言葉なんていらないと思った。
好きです、好きで好きで好きで、大好きで、
いくら叫んでも聞き入れないというのなら、君の頭を押さえてその耳に直接叫んであげる。そのためなら、形振りなんて構うものかと思ってはいるけれど、けれど、けれど、やっぱり君が傷つく姿を見るのはつらくて。
でも謝らないよ? だって間違ったことをしたとは思わないから。
好きです、好きです、別に返事が返ってこなくてもいいんです、ただ、貴方と対等に話がしたい。植民地と宗主国なんて関係じゃなくて、兄と弟なんて関係じゃなくて、ただ一人の、男として。
ただ、その目を見て、まっすぐに一言紡げればいい、感情の一欠を伝えられればいい。
目を閉じて君を思い出すよ
蘇るのは、出会った頃のことばかりなんだ。
まだ俺の背の半分もなかったガキの頃の思い出なら、いくつでもあげられるのに、その背が伸びるのに比例して語れる思い出の数は減っていく。
今思えば、決別はそのころから避けられないものだったのかもしれない。その心が離れていくことに気付かなかった俺はなんて馬鹿なんだろう。
ごめん、ごめん、けど、一つだけ聞かせてくれないか?
この手がつながった瞬間が確かにあったと、その確証が欲しい。
最後にひとつ、願ってもいいですか
ごめん、きれいごとばかり言ってるけれど本当は、
ああ、過去ばかり振り返っているけれど本当は、
何年、何十年、何百年かかってもいいから。
もう一度笑い合える世界がありますように。
「米→→→→←英のシリアスでWW2ネタもしくは独立戦争ネタ」とのことでしたので、独立戦争をチョイスさせていただいた、の、です、が、すみません、いつも以上に感覚任せになってしまいました。世界史苦手なので矛盾点が多いのですが、いろいろ大目に見ていただけると嬉しいです。
お題はこちらをお借りしました。
ではリクエストありがとうございました。書き直し承ります(10/13)