ビーバーな米英パロです。だが国名表記。
外見は獣です。
あとナチュラルに新婚さんです。
ビーバーは自分の生活のために周囲の環境を作り替える、人間以外の唯一の動物と言われています。
彼らはダムを造り川をせき止め、できたダム湖にホームを構えるのです。
鬱蒼とした森の中、美しい川のせせらぎが聞こえる水辺には、今日も彼らが木を削る音が響いています。
「イギリスー! そっちに倒れるんだぞー!」
「なっ、このばか、危ねぇだろっ」
ばきばきと音を立てて木が倒れてゆきます。その下敷きになりかけたイギリスは慌てて安全な場所まで逃げだしました。
そのすぐ後にイギリスが直前までいた場所めがけて木が倒れました。
間一髪助かったことにイギリスがふぅとため息をつきます。それから特徴的な眉をひそめて木を倒した犯人を睨みつけました。
「木を倒す時は誰もいないこと確認しろって何度も言ってるだろ、ばかぁ!!」
「DDDDD君なら避けられるから大丈夫じゃないか」
「そう言う問題じゃねぇ!!」
イギリスがどれだけ真剣に諭しても、アメリカは笑うだけで全く話を聞いてくれません。
イギリスがアメリカとつがいになったことをちょっと後悔してしまうのはこんなときです。
ちょっと俯きがちにイギリスが過去の自分を呪っている間にも、アメリカは鼻歌交じりに切り倒した大木の枝を落としています。
これ以上何か言っても聞き入れてくれないことは分かっていましたから、イギリスは渋々木材集めを再開しました。
ダムを作るには丸太で土台を組んで、それを枯枝や泥で固めていく必要があります。ですから材料として大木と枝の両方を集めなくてはいけないのですが、アメリカは大木を切り倒す方ばかりをやりたがるので、イギリスの仕事はもっぱら枝集めなのです。
ぺたぺたと歩きまわりながら手ごろな枝を拾ってゆきます。
拾い集めた枝が両手いっぱいになり、そろそろ未完成のダムに向かおうとしたイギリスでしたが、何故か前へ進めません。
足は動くのに、どうしてだか体が前に進まないのです。
振り向いてみると、アメリカがイギリスの尻尾を踏んでいました。一般的なビーバーと比べるとちょっとだけ重たい脚が乗っていては、イギリスの体が動くはずもありません。
イギリスはムスッとした表情でアメリカを見ました。
「何すんだよ、アメリカ」
「DDDDD相変わらず楽しくない反応だなぁ」
たしたしとイギリスの尻尾を踏みながらアメリカが唇をとがらせます。
イギリスにはアメリカの言う楽しい反応というものがどんなものなのかどうしても分かりません。ですから、アメリカが喜ぶ様な反応なんてできっこないのです。
イギリスがアメリカとつがいになったことをちょっと寂しく感じてしまうのはこんなときです。
「ふざけてないでお前も早く仕事しろ。働け」
「もうっ、少しくらい休憩したっていいじゃないか」
「お前の場合休憩の比率が多すぎるんだよっ。ほら、働けってば」
まだ文句ありげなアメリカを急かして、材料の調達へと向かわせました。
イギリスだってダム作りの続きをしなければならないのです。アメリカの気まぐれにかまっている時間はありません。
せっせと集めた枝を抱え、イギリスは川に飛び込みました。
ビーバーはとても泳ぎの上手い動物なのですが、実のところイギリスはあまり水の中が好きではありません。毛皮に水が染み込んで皮膚の濡れる感覚がどうしても好きになれないのです。
そう言うわけでアメリカとつがいになるまで、イギリスはダムも作らず岸辺でばかり生活しているビーバーでした。ですがつがいになったからには子供を産んで子育てをしなければなりません。
イギリスは天敵であるコヨーテ一匹や二匹なら撃退できてしまう規格外のビーバーでしたが、子供を危険にさらすわけにはいきませんし、何よりアメリカがマイホームが欲しいと訴えるものですから、イギリスはこうしてダム作りに勤しんでいるのです。
ざばざばと水を掻いてイギリスは建設中のダムへと向かいます。
アメリカが切り倒した丸太が土台として組んである部分に更に枝を組み、川の底から掬ってきた泥で固め、まだ枝を組むという作業をイギリスは繰り返しました。
岸近くの森からはアメリカが元気に木を切り倒す音が聞こえてきます。
なんだか無性にむしゃくしゃして、イギリスは両手いっぱいの泥をダムめがけて力いっぱい投げました。
バキっ、と音がしました。
「えっ?!」
当たり所が悪かったのでしょう、しっかりと組まれていたはずの木が崩れてしまいました。ばきばきとダムの一部が壊れてゆきます。
堰き止められていた水が開いた穴へと一気に流れ込みました。
「ぅわぁあああぁぁあ?!」
イギリスの体が押し寄せる水に巻き込まれ、流されてゆきます。水を掻けども掻けども泳ぐことができません。イギリスはすっかりパニックになってしまいました。
一方、森で伐採に勤しんでいたアメリカはイギリスの悲鳴を聞きつけて慌てて岸辺へと向かいました。
見ればやっと口説き落とした愛しのお嫁さんがどんぶらこっこと川を流れてゆくではありませんか!
アメリカは森から駈け出した勢いのまま川へと飛び込みました。
イギリスのもとまで泳ぎ着いて、暴れるイギリスを宥めます。
「落ち着いてってばっ、イギリスっ!」
「がはっ、ゴホっ、っあ、アメリカ――っ?」
「大丈夫かい? まったく」
アメリカはイギリスの首の後ろを銜えて、岸辺まですいすいと泳いでゆきます。丸太だって銜えてらくらく泳げるアメリカですから、大事なお嫁さんを運ぶことだって彼には容易いことでした。
辿りついた岸辺にべチャッとイギリスを投げ捨てました。水浸しで毛並みも良くないイギリスはそうやって倒れていると雑草が絡みついた流木のようです。
ちょことちょこと岸辺に上がったアメリカは身震いをして全身の水をふるい飛ばしました。
「生きてるかい? イギリスー」
「うぅ……」
「君は相変わらず泳ぐのが下手だなぁ。だから一緒に練習しようって言ってるのに」
「うるせぇよ……もういい、俺は陸で生きていく……」
「それじゃ困るよ。君は俺のお嫁さんだもん」
不貞腐れるイギリスの背を撫でながらアメリカが言い聞かせます。
みすぼらしいイギリスの毛皮を見かねてアメリカはイギリスの毛づくろいを始めました。
「君は毛づくろいが下手なんだよ。だから泳ぐと毛皮に水が入っちゃうんだ」
ビーバーは前脚の部分から油が出るようになっており、これを毛皮に塗ることで水をはじいているのです。
イギリスはどうもこの毛づくろいが苦手のようで、いつも少し乱れた毛並みをしています。
イギリスのひょこんと跳ねた頭のてっぺんの毛を撫でつけて、アメリカは笑いました。
「泳ぎも毛づくろいも俺が教えてあげるから、ね?」
「…………」
イギリスはふん、とそっぽを向きましたが、アメリカはイギリスがとても照れ屋で天邪鬼であることを知っていましたので、笑みを深めてイギリスの毛づくろいを続けました。
アメリカが上機嫌で口づさむ、ちょっと音の外れた鼻歌が岸辺に響きます。
イギリスは不機嫌な風を取り繕いながら、その歌にひっそりと耳を傾けていました。
イギリスがアメリカとつがいになったことを世界で一番至福に思うのはこんなときです。
チャットで話題に上がったビーバーな米英です。
ビーバー米英のイラストくれたら小説書く!っていったらつきさんが描いてくれました→◆
こういう文体は私には向かないなって心底思いました(02/04)