「頼むよ兄弟!」
俺はそう言ってカナダに頭を下げた。
そうすればお人好しな彼が断われないことを知っていた。我ながら性格が悪い。
「うーん、仕方ないなぁ。2週間だけだからね、ちゃんと連絡入れてよ」
「OK! 3日に一度は連絡するよ」
「分かった。他でもない兄弟の頼みだしね。身代わり、引き受けてあげるよ」
「ありがとう、カナダ!」
無事身代わりを引き受けてくれることになったカナダにいつも着ているフライトジャケットを渡した。
これで心おきなく旅に出れる!
カチリ、とシーンが切り替わる。
眉をひそめた彼が目の前に立っていた。
「お前、なんて言った?」
「だから、君が好きだよ」
聞かれたから正直に答えただけなのに、イギリスは眉根のしわの数を増やして見せた。
何がそんなに不服なんだい?
なんて、聞くまでもないか。知ってるよ、今でも君が俺を弟のカテゴリから外せてないことくらい。
「お前なぁ、いきなりそんなこと……」
たらたらと続けようとするイギリスの唇に指を押し当てた。
そうやって、きれいな形のそれからこの後飛び出すであろう百万語の悪態と、俺の告白に対する回答を封じた。
「答えを聞くのは、今じゃなくてもいいかい?」
そう彼に問うた声は自分のものとは思えないほど弱弱しかった。
こんなんじゃ駄目じゃだ。俺は世界のヒーロー・アメリカだぞ?
一世一代の告白なんだけどなぁ。
昔はもっと綺麗に、もっとカッコ良く、想いを告げられると思っていたんだ。
いつの間にこんなに憶病になったんだろうか。
おおよそ理想とはかけ離れた告白劇に、涙さえ浮かんできそうだった。
でも、答えがもうわかり切っているんだから仕方ないだろう?
いつもまでもずるずると幼い恋心を引きずってるなんて、それこそヒーローらしくない。
だから、色よい返事をもらえないことを承知で告白をした。でもさ、まだその返答を聞くのは怖いんだ。ホント、憶病でごめん。
「2週間。俺に時間をもらえるかい? 答えは、その時に聞くから」
その間に、消すまでとはいかないけど、なんとか君への想いを昇華させて見せるから。
2週間後、君の返答をしっかりと受け止めて見せるから。
「……分かった」
しぶしぶといった様子で承諾したイギリスに、ありがとうと素直に告げることができた。
ホント、憶病だなぁ。
少し気の早い傷心旅行。
この2週間で、彼への膨らみすぎた想いをしぼめよう。
何百年と積み重ねてきたものを消せるとは思っていないけれど、それでも彼の返答を受け止められるようにしなくては。
2週間後。無慈悲に訪れてしまうピリオドへのカウントダウンが始まった。
荷物はまとめてある。好きな考古学に没頭するための準備は万端だ。
消せるかな。消さなくちゃ。
何度も自分に言い聞かせて、荷物を肩に担いだ。
ふと、背後で声が聞こえた。
少女の、鈴を転がすような笑い声。
おいおい、こんな時に幽霊かい? 勘弁してくれよ!
少女のクスクス笑いはよく聞けば三重奏だ。
「……が……イギリスの…………?」
「…………に……はどう……?」
「それは…………、じゃあ……」
イギリス?!今イギリスって言わなかったかい?
まさかあの人の幻聴が俺にまで聞こえるようになったとか、そんなんじゃないよな……?
とにかく早く逃げよう!
ずり落ちかけた荷物を担ぎ直して、玄関へと向かう。
急ぎ過ぎたせいで足がもつれた。荷物が重いせいでバランスがうまくとれない。
倒れる!そう思った瞬間、意識がプツリと切れた。
アメリカ猫作成は妖精さんの悪戯でした。(08/09)
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