日が天頂近くになってから起きだす生活が続いている。
でも、彼はそうじゃなかったはず。
やわらかな日光が瞼越しに目を焼いて、ごろりと寝返りを打った。
どん、と壁に阻まれた。
こんなところに壁なんてあったろうかと、薄目を開けて、
一気に意識が覚醒した。
寝起きにいきなり彼の顔があるっていうのは……なかなかに心臓に悪い。
そうか、昨日はイギリスに連れ込まれたんだっけ。
今思うとよくもあんな状況で眠れたものだと思う。
あの時はとにかく眠くて眠くて眠かったから。睡魔って偉大だ。
がっちりと腹部をホールドするイギリスの腕から抜け出して、ぐいと背を伸ばした。
ひょいと尻尾を一振りして、ベッドにしたんと腰を下ろす。
寝癖で乱れた毛並みを整えて、ごしごしと前足で顔を洗って、それでもまだ起きないイギリスを見やった。
そう言えばイギリスの寝顔ってあんまり見たことないなぁ。
幼い自分には彼より遅くまで起きていることも、彼より早く起きることもできなかった。
ああ、でもよく会議中とかうたた寝はしてるか。
迷惑な寝言を呟きながら。
あるいは、
きゅ、とその特徴的な眉を寄せて。どこか苦しげに。
だから、こんなに穏やかで気の抜けた寝顔っていうのは、あまり、見ないかもしれない。
平常時もだが、眉をひそめていない彼はひどく幼く見える。
口を半ば開けて眠る様子は、どう見たって何百年と時を重ねてきた老大国とは思えない。
「にゃー」
「いぎりすー」
むにむにとその頬をつつく。
「ん、」
眉を軽く寄せて、イギリスが寝返りを打つ。
イギリスの正面に回って、また頬をつついた。
まだ起きる気配はない。
「なぅー」
「起きなよ、イギリス」
これ以上起きないといたずらしちゃうぞ。
じゃれてその頬をなめた。
「にゃぅ」
「こんなに好きなのにね」
「にぃ」
「なんで君には届かないかな」
「みゃぁお」
「好きだよ」
「にゃあ」
「好きだよ、イギリス」
なんどでも。なんどでも。
言葉を重ねてあげる。
遠い昔から重ねてきた想いだから。
ねぇ、早くその手で掬ってよ。想いが飽和してしまうその前に。
「にゃぁ」
「ねぇ、イギリス…………」
すりー
つー
わんっ
「にゃーんっ!」
「どーん」
「ぐふっ?!」
助走をつけてその腹部めがけて飛び込めば、イギリスが奇声をあげてはね起きた。
目を白黒させたイギリスが、状況を理解して、腹部に乗ったままだった俺の首根っこを持って吊り上げた。みょん、と首の皮が伸びる。背中のあたりが突っ張って結構痛い。
「お前、自分の重さを自覚しろ!」
「にゃあ」
「起きない君が悪いんだぞ」
「起こし方ってもんがあるだろ!?」
イギリスが仕返しとばかりに首を掴んでいた手を離した。
「ぶにゃっ」
「痛って」
「がふっ!」
思いっきり、イギリスの腹の上に落ちた。
君、時々何も考えないで行動するよね。
「げ、もうこんな時間じゃねぇか。もっと早く起こせよ」
「にぃ」
「起こしたじゃないか」
「もっと早く!!」
「にゃーぁ」
「はいはい」
まだぶつぶつ言っているイギリスを無視して寝室を出た。
バタバタとイギリスが着替えをする音が背後で響いている。
やれやれ
尻尾を一振りして。
そろそろいつもの定位置に戻ろうか。
今回は少し短めに仕上がりました!
ホントはこれくらいの日常の一コマが理想なのですが……
十キロ強(推定)が腹部に落ちてくるのは……恐怖です……(07/20)
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