ねぼうしたひ

8日目

日が天頂近くになってから起きだす生活が続いている。
でも、彼はそうじゃなかったはず。



やわらかな日光が瞼越しに目を焼いて、ごろりと寝返りを打った。
どん、と壁に阻まれた。
こんなところに壁なんてあったろうかと、薄目を開けて、

一気に意識が覚醒した。

寝起きにいきなり彼の顔があるっていうのは……なかなかに心臓に悪い。

そうか、昨日はイギリスに連れ込まれたんだっけ。

今思うとよくもあんな状況で眠れたものだと思う。
あの時はとにかく眠くて眠くて眠かったから。睡魔って偉大だ。


がっちりと腹部をホールドするイギリスの腕から抜け出して、ぐいと背を伸ばした。
ひょいと尻尾を一振りして、ベッドにしたんと腰を下ろす。
寝癖で乱れた毛並みを整えて、ごしごしと前足で顔を洗って、それでもまだ起きないイギリスを見やった。

そう言えばイギリスの寝顔ってあんまり見たことないなぁ。
幼い自分には彼より遅くまで起きていることも、彼より早く起きることもできなかった。

ああ、でもよく会議中とかうたた寝はしてるか。
迷惑な寝言を呟きながら。
あるいは、
きゅ、とその特徴的な眉を寄せて。どこか苦しげに。

だから、こんなに穏やかで気の抜けた寝顔っていうのは、あまり、見ないかもしれない。

平常時もだが、眉をひそめていない彼はひどく幼く見える。
口を半ば開けて眠る様子は、どう見たって何百年と時を重ねてきた老大国とは思えない。

「にゃー」
「いぎりすー」

むにむにとその頬をつつく。

「ん、」

眉を軽く寄せて、イギリスが寝返りを打つ。
イギリスの正面に回って、また頬をつついた。

まだ起きる気配はない。

「なぅー」
「起きなよ、イギリス」
これ以上起きないといたずらしちゃうぞ。
じゃれてその頬をなめた。


「にゃぅ」
「こんなに好きなのにね」
「にぃ」
「なんで君には届かないかな」
「みゃぁお」
「好きだよ」
「にゃあ」
「好きだよ、イギリス」

なんどでも。なんどでも。
言葉を重ねてあげる。
遠い昔から重ねてきた想いだから。
ねぇ、早くその手で掬ってよ。想いが飽和してしまうその前に。

「にゃぁ」
「ねぇ、イギリス…………」








すりー

つー

わんっ

「にゃーんっ!」
「どーん」
「ぐふっ?!」

助走をつけてその腹部めがけて飛び込めば、イギリスが奇声をあげてはね起きた。

目を白黒させたイギリスが、状況を理解して、腹部に乗ったままだった俺の首根っこを持って吊り上げた。みょん、と首の皮が伸びる。背中のあたりが突っ張って結構痛い。

「お前、自分の重さを自覚しろ!」

「にゃあ」
「起きない君が悪いんだぞ」
「起こし方ってもんがあるだろ!?」

イギリスが仕返しとばかりに首を掴んでいた手を離した。

「ぶにゃっ」
「痛って」
「がふっ!」

思いっきり、イギリスの腹の上に落ちた。
君、時々何も考えないで行動するよね。

「げ、もうこんな時間じゃねぇか。もっと早く起こせよ」

「にぃ」
「起こしたじゃないか」
「もっと早く!!」

「にゃーぁ」
「はいはい」
まだぶつぶつ言っているイギリスを無視して寝室を出た。
バタバタとイギリスが着替えをする音が背後で響いている。

やれやれ

尻尾を一振りして。


そろそろいつもの定位置に戻ろうか。










今回は少し短めに仕上がりました!
ホントはこれくらいの日常の一コマが理想なのですが……
十キロ強(推定)が腹部に落ちてくるのは……恐怖です……(07/20)